資料室

 Book

・画像の情報処理, 榎本肇編 3章 s53 コロナ社

・系統的画像符号化 アイピーシー H2。

  • 感性のテクノロジー入門 –暗闇から生まれる映像表現- ASCII (2005, 6)、

  改訂版:アカシックライブラリー (2014,6)

  • Makoto Miyahara and R.Kawada, Editor:H.R.Wu, K.R.Rao, “Image Quality and Perceptual Coding (Chapter 6: Philosophy of Picture Quality Scale, of ” Digital video “,PP.181-223. Tayler & Francis CRC (2005,11/8)

・宮原 誠(ペンネーム:響學), 新・電気音響再生,アゴラブックス (2012/12 電子版),  (2013/5 紙版).

・宮原 誠, “感性音響論 -突破的オーディオの再生に向けて-“ 静岡学術出版,2017.1.

論文 (2022以前の、深い感性のテクノロジー研究会アーカイブ)にあり。 

宮原誠 研究履歴 (2022以前を含む)

東工大修士(電子)では回路技術に習熟。任意の伝送関数を実現できるRC能動回路を考案,修士論文(1968Electronics Letters Vol.5,No17)。

 NHK技研にて、約10年間画像信号の帯域圧縮、符号化の研究に従事。特に知覚レベルの視・知覚、動きの視・知覚特性の研究、実験により、ハイビジョン符号化方式の基本アイディアを公表(1972~ テ学会). また、フレーム間符号化。

 長岡技大で、直交変換符号化方式: 1985-01, IEEE Trans.Comun.Vol.COM-33,No.1 ~。

(説明) 画質評価は「網膜レベルの視覚特性の考慮に加えて上位階層の知覚」の考慮が重要であり、人は静止、動き画像ともに、単純な視力より10倍以上の知覚能力があることを示した。この結果を高画質の直交変換符号化、動画像の符号化の研究に結びつけ、block歪みの解析、削減法など、JPEG、MPEG符号化の基礎を与えた。これを発展させて、客観評価尺度(PQS)の研究に結びつけた。画像の符号化設計、評価用のPQSソフトは世界に公開している。

 動画像の符号化(フレーム間符号化)で発生する符号化歪みの解析、その視・知覚の心理物理学的研究成果は、現在でも、LED、PDP、SEDディスプレイ方式の画質検討の基礎として使われている。

 1990年より、Audio-Visualの雰囲気、実在感、臨場感、質感などに重要な高度感性情報の符号化の研究および心理物理学的研究「Audio-Visualの雰囲気、実在感、臨場感、質感などの高度知覚を得るための物理要因・特性を明らかにする科学的基礎研究」に取り組む。 

 これらの要因を考慮した「Extra HI Quality Audio-Visual Systems」を開発。これらのインフラとコンテンツを融合させた、新文化「未来映像・音、芸術」創造をテーマに、東京藝術大学と協力し、未来開拓研究projectを中心に成果を発表。

 Audio-Visualの雰囲気、実在感、臨場感、質感などの高度知覚を得るための物理要因、特性を明らかにする研究を行ってきた。そして21世紀の新しいメディア「Extra HI System M 」を開発した。

 暗闇、静寂で期待できる、れまでにできなかった表現の例は、永井ふさ子の「心の闇」、速水御舟の「炎舞」、悲母観音、伊藤若冲の「旭日鳳凰図」、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」の世界、糺の森のエピソードの世界、“井筒”(シックスセンス)、今昔物語などがあげられる。

 上記のような心の深いところで感じるものを表現するには、高度感性情報の忠実な再現が必要である。黒と階調の再現は従来のテレビでは不可能な0.005cd/m2が必要であり、白(自発光)100cd/ m2および12bit(4096) 階調の精密なγ特性の補正も必要となる。

② 動き表現

(a) Jerkiness妨害

 テレビや映画でのコマ繰り返しはJerkinessと呼ばれる動き妨害を発生させる。コマ繰り返しをしないときは、24度/秒の速い動きまで自然な動きにみえる。

(b) 追従視

 テレビの動画像に対しては、目が動きに追従して見ている追従視である。その実証は、(1)、振動している物体に対する動視力は振動の振幅によらない。(2)、また振動数が5Hzを超えると、目が動き物体をとらえられなくなって急に見えなくなる。 以上のように眼球が動きに追従していれば静止画を見る場合と同様に見える。よって、カメラによる動画像のボケ(動きぶれ)は、静止画がぶれた場合のように見える。即ち、追従視である限り、動いているものが見え難いということはない。(3)、テレビの垂直同期信号に同期した回転シャッターを用いたカメラで、シャッター速度を1/120秒、1/180秒と変えて動きボケを少なくすると動画質が改善される。これは人の目が動きに追従して対象物が網膜上では動かず固定して捉えているためである。

 人の眼球はsaccadic movementと呼ばれる動きをともなう。約220msの時間間隔できょろきょろと自律神経により動く。蛙の目は動かないので、見ている対象物が動かないと見えない。しかし人間は高度に発達した生物なので、対象物が動かなくても、常時見えるようにするために眼球を不随意に動かしているものと考えられる。saccadic movementの動作中に、動物体はほとんど見えていないが、視知覚系では「動きを直線近似して予測曲線の上にのっていれば問題なし」と知覚しているものと考えられる。

(c) 視覚特性と画質評価

 従来のS/Nでは、符号化で生ずる誤差をランダムノイズと同じ重み付けで扱っているが、客観評価尺度(PQS)では輪郭に沿う歪は目立つので、重み付けを大きくしている。また印象的な場面は総合画質評価に3倍くらいの重みを持つ。

 動きの視覚特性を利用した帯域圧縮の例として、MUSE方式は、ハイビジョン信号を4シーンアダプティブで1/3.5(8.1MHz)に圧縮している。

 動きが非常に小さい場合には視覚特性はよりシビアになる。人間が動きを感じる速度閾は、視覚速度で1~2分/秒である。テレビで表現できる100倍も人間の目の方がよい。高品位な映像ではこの精度を実現しなければ作品のニュアンスが再現されない。

・映画は1カットづつ、ちょっとした動きのシーンでつないでいく。人間は5Hzくらいの振動までしかフォローできない。人間がフリッカーを最大に感ずるのは、13Hzくらいまで。これを人間のクロック系と考え、サンプリングで5~6Hzくらいまでしか情報が入らないと考えると、標本化理論で説明ができる。

・人間の視覚特性について、脳の働きを含めた研究は→絶対必要。感性はこわくて触れられなかった面があるが、早くこれは常識だというところまで学問化する必要がある。

 電子画像の更なる深い表現を可能にする「Extra HI System M」

 Extra HI System Mは“黒百色、肉色の変容、顕幽相即”という語で表す深い表現を有する高品位なコンテンツを表現することを目標として開発した。

 高度感性情報の忠実な再現のための要因を発見するために、まず高度感性情報として、深み、凄み、空気感、生命感を設定し、心理物理的キー評価語として、奥行き、階調(黒を含む)鮮鋭を手がかりとして6つの物理要因・特性(波形歪・輪郭強調、色差、絶対黒・白、インパルスレスポンスなど)を抽出した。

 Extra HI System M は“暗闇ではなく黄昏、無音ではなく森の環境場”を実現している。

これは「顕幽相即」心地よいノイズの存在の世界であり、即ちノイズを徹底的に取り去った後の無音よりも、森の環境の静寂が心地よいということである。また無光より「未明」「黄昏」にこそ闇と静寂の深化があるという表現を実現している。

 新次元メディア論

 文系、芸術分野の人との協力は任せるのではなく、科学工学分野の人が社会、美術、心理、宗教などを勉強して、同格に議論できる感性ある情報マイスターとなることが必要である。

以上。